ドクター

お昼になった。
院長は昼ご飯ができたので、朝ご飯を食べていない斉藤先生と実加を呼びに、実加の部屋へ向かった。
実加の部屋の扉を開けると、実加の寝ているベッドにもたれかけるように斉藤先生が寝ている。
その顔はそっくりだ。
この顔を見て、誰がこの二人は兄妹じゃないというのか。
誰もが兄妹と認めるだろう。





しかし、いつかは本当の兄妹なのか、DNA鑑定をする日がくるだろう。
わしはこんな年寄りなのに、実加ちゃんを引き取ってしまった。
孤児院でこの子を見た時、実にそっくりだった。そして体はボロボロだった。
そんな彼女を放っておけなかった。
実にはこの子が唯一の家族じゃ。この子のためにも実のためにも、心の底から安心しあえる家族が必要なんじゃ。
今は受け入れられないと思うが、いつかはこれが正解だったと思える日が必ず来る。
二人共、今までになかった幸せを、これから築いてくれ。





院長が二人の寝顔を見ながら思いにふけっていると、斉藤先生が目をこすりながら、院長を見る。




「ふあ~・・・あ、院長。
おはようございます。」





「あぁ、飯ができたぞ。」




「あ、すいません。
実加、実加。起きれるか?」






斉藤先生が寝ている実加を揺すって、声をかける。
実加は斉藤先生と同じように目をこすりなが起きる。
そして目を見開き、驚いてすぐに布団を頭から被った。
斉藤先生がその布団をまた捲る。






「いつまでそんなことをしてるんだ。
飯だぞ。ほら、行くぞ。」




斉藤先生は実加の抵抗をなんともないように接する。
実加は斉藤先生と目が合わないように、下を向く。
斉藤先生はそれでも実加の顔を覗き込んで、




「飯を食わないから発作が起きるんだぞ。」




と少しいたずらな顔で言う。
実加は驚いた顔で斉藤先生を見た。その後、院長の顔を見て、今言ったことは本当なのか、とでも言いたい顔をする。
院長は斉藤先生に合わせて、深くうなづく。
それを見た実加は、布団を足元にやり、ベッドを降りようとするので、斉藤先生と院長はホッとした顔をして、実加が立ち上がるのを待った。
実加が立ち上がろうとベッドから手を離した瞬間っ、実加はフラッと体を傾けた。
すかさず斉藤先生が支え、実加を立たせる。
そして実加の額に手をやり、熱がないか確認をする。




「ずっと寝ていたから、貧血を起こしたんだな。
ゆっくり歩けるか。」




その斉藤先生の言葉に、ようやく実加がうなづく。
初めて斉藤先生の言葉に反応を示した実加。
斉藤先生は少し驚いた顔をして、院長を見る。
院長も良かったなという顔でうなづく。





斉藤先生は実加を支えながらゆっくりと部屋を出て、廊下を歩いてリビングに向かった。
リビングには院長の作った手料理が並ぶ。
院長は趣味が料理で、毎食必ず院長が手料理を作る。
実加は院長の料理を見て、食欲が湧いてきた。
三人が席に着くと、それぞれ手を合わせ、いただきますと口にして、食事をした。
実加は久しぶりに食べる食事だった。
院長はそんな実加のために、おかゆを作った。もちろん柔らかい煮物も用意してある。
実加は相当食欲が出てきたのか、ゆっくりだけどしっかりと食した。
そんな様子に、院長も斉藤先生も喜んでいる。
さっきは検査もできないと思ったけど、もしかしたら、できるのかも知れないと二人は思った。








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