クロ * Full picture of the plan * Ⅳ

朝比奈琥珀 side




明日の朝には戻る。と、青星の倉庫を出てきたのが5分前。



徒歩で帰れる距離だから、俺は1人、真っ暗な夜の道を歩いていた。



夕方に少し降った雨で道路が湿っている。



梅雨ももうじき終わるが、やはりジメジメとしていて蒸し暑い。



…これだから雨は嫌いだ。



元々高くない気分が雨が降った後のどんよりとした空気でどんどん下がっていく気がする。



年に一度、必ずやってくる梅雨の季節は昔から憂鬱だった。



こういう時期は、毎年の様に雨が降るたびにヘッドホンを付け、雨の音が聞こえないよう、大音量で興味の無い音楽をずっと流していた。



家に居ても、外に出ても、ずっと。



傘をさしているのを見ると、どうしても雨が降っていると実感され、その度に俯いて歩いていた。



そんな俺を、向日葵も陽向も何も言うことなく、普通に接してくれた。



音楽を大音量で流しているから向日葵たちの声も聞こえないが、そうしている内に読唇術で分かるようになっていた。



…まあ、流石に殺しの時はヘッドホンではなく、耳栓だったけど。



いつしか俺はこの時期には必ずヘッドホンやイヤホンを持ち歩くようになっていた。



今だって鞄の中にはヘッドホンとイヤホンの両方が入っている。



去年からはあまり使わなくなったが、やはり持ち歩かないと不安になる。


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