クロ * Full picture of the plan * Ⅳ

朝比奈琥珀 side




……………。



"ひま"が出ていった後、時間で言えば数十分だったと思う。



その数十分でさえ、俺には何時間もの時間に感じられた。



それくらい、俺は多分混乱していたんだと思う。



そして、その混乱から解けたのはおおよそ数十分経ってからだった。



正常に戻った頭で、俺はまず辺りを見渡す。



全員が全員呆然としていて、あの"ひな"でさえポツンと突っ立っていた。



そんなひなに声をかけられるはずもなく、俺は隠し持っていた護身用の短剣を探り出し、俺を吊すワイヤーを切った。



順に切っていくと、トンッと足が地面についた。



それを合図に俺の身体に巻き付くワイヤーを一気に切った。



すると、心ここにあらず状態だったひなが、短剣を滑らせた音に気が付き、俺の方を見た。



バチッと目が合い、それだけで全部がわかった。



……思い出したんだな。



そう確信し、慣れた手つきで持っている短剣をひなに投げ渡す。



パシッ



小さな音を立てて短剣を受け取ったのを確認し、俺はもう一つ隠し持っていた折りたたみナイフを取り出した。



俺はまず、一番近くにいた志のワイヤーを切る。



ブチッブチッ



ワイヤーを切っていく音で、志はどんどんと通常に戻っていった。



プチンッ



最後のが切れ終わると、志は完全に俺の目を見ていた。


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