さよなら、愛しき人。【完】
あーー、重たい。
こんなに買うんじゃなかった。
でも、今日ぐらいはいいよね。
記念日なんだしさ。
今日は豪華なもの作っちゃうよー♪
心を踊らせ、歩いていると、反対側の歩道に愛しき人を見つけた。
「あっ!より……と…」
私の声は、周りの音にかき消された。
荷物が私の手からすべり落ちた。
目の前の光景を受け入れられなかった。
だって頼人が……綺麗な女性と手を繋いで歩いていたから。
頼人の顔は、今まで見たこともないぐらい穏やかで。
私は一瞬にして悟った。
あぁ、どうやったって私はこの人に勝てない。
貴方の1番は、私なんかじゃない。
だって、貴方自身がそれを物語っているでしょう?
私は落とした物を拾い、すぐに家に帰った。
それからは無心でご飯を作った。