笑う門には福来たる!!
「誠十郎聞いてくれ
俺はな、両親を亡くして、兄弟を亡くして
目の見えない兄がいて、俺自身も労咳を患ったことがある」


優しく語る土方の目には、涙が溜まっていた


「子供の頃から、武士になると決めていた
家業の薬売りの傍ら、道場を回って稽古をした
近藤さんも農民の生まれで
俺達は、武士になる!!そう誓った!
近藤さんと芹沢さんが掲げた尽忠報国
俺達は、国の為、国の人の為に
武士になるんだ!!
世間は、俺らを厄介者扱いだが
それでも、その人達を守りたいんだ」


土方の目から、ポツリと涙が落ちる


「その中にお前もいる
誠十郎は、家族を守りたいはずだ
色んな噂たてられて、家族の為に家を出ようと決めたんだろ?
生きてりゃ
辛いことのほうが多いかもしれねぇ
だが、良いことだってあるだろ?
死んだように生きてて、良いことに気づくか?人の温もりに気づくか?
てめえが苦しんでいるように、廻りも
苦しんでるんだよ!!
少しでいい、立ち直る努力をしてみろ!!
俺らが、ついてるから!
一人じゃねぇんだぞ!!」


「誠十郎!!見てみて!!
鬼の目にも涙だよ!!あはははっ」


「うっせぇ!!」


誠十郎が土方を見る


「ちゃんと見な?
誠十郎の事を心から、思っている涙だよ!
こんなに僕らは、誠十郎が大好きなんだよ!
誠十郎!僕は、君を笑わせる!
信じてくれてるんでしょ?」


「総司… 土方さん…
優しいよなぁ
でも、ごめん… 
生きてるのが、怖いんだ
なのに、死ぬ勇気もないなんて…」

「生きてこそだ!
生きてないと、なりたい者にも
誰かに何かをしてやることも
何にも出来ないんだぞ!?
誠十郎、お前が君菊として踊っている時
客の顔を見てみろよ!
お前は、人を幸せにする!
お前が笑えるようになれば、もっと廻りも幸せになるんだ!!」

「そうです!!芹沢さんは、凄くいい顔して亡くなりました、誠十郎の笑顔を見れたからです!!斬った僕が言うのもなんですが、死に急がずに、人を幸せにする方法を
芹沢さんは、知らなかったんです
誠十郎は、芹沢さんの歳まで、まだまだあるから、僕が教えてあげる!!
僕が皆に教えて貰ったこと、全部!!」


「それでも… 生きてることが辛かったら
俺も、総司に斬られたい」


「うん!いくらでも斬ってあげるよ!
そんな時は、来ないけどね!!
僕、自信があるんだ!!
新選組に誠十郎が入ってくれたら、すぐに生きててよかったと思えるんだけど!!
どう?」

「いやぁ~、人斬るのとか… ムリ」

「よく言うよ!川に落として殺そうとしたんだろうが!!」

「あーそんなことあったなぁ」

「ねぇ!!入ろう!?ねぇ!!」

「んー?ヤダ!!」

「なんで?入ろう?」

「嫌だ!!総司、うるさそうだから!!」

「えー!?静かにするから!!」

「すでに、うるせぇ!!
俺、仕事入ってるから、帰る!!
くれぐれも、他言無用だからな!!」


鼻血も止まり、少し元気になって屯所を出たのだった





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