笑う門には福来たる!!
家を出てから、仕事ばかりしていた

しばらく置屋を離れたいと女将に告げると

思いの外すんなりと許してくれた

条件付きで…


「どこに行くか、教え?
それから、三日間は指名があるから
それは、頼むで?」

「誠十郎として、妊婦の世話をします
産み月まで二月あるそうなので、三日間なら大丈夫ですね」


実は、誠十郎の産みの母と
舞踊の師匠は、幼なじみで

その師匠が、唯一生まれた時から誠十郎が女だと知っていた

いつでも女として生きられるように

舞踊や三味線を身につけさせようとした

母や師匠の思いとは、他所に

男らしく、たくましくなる

父親や祖父母が成長を喜ぶたびに

母は、罪悪感に嘖まれた


母が亡くなった後、師匠が女だと知っていると打ち明けたときから

誠十郎は、師匠のとこに通うのをやめた


しかし、初潮が始まった時、人目につかないように師匠の所へ行き

助けを求めた


女という生き方をしてこなかった

女とは、どういう存在かもわからなかった


師匠の勧めで、この女将に習うことにした

女将の躾の良さから、君菊として

太夫になることが出来た


誠十郎は、女将に感謝している

「二月え?」

「大きさから、産婆がそれくらいやと」

「いつ産気づいてもええように
準備しとかなあかんよ?
出産の手伝いは、したことあるし
大丈夫やな?」

「はい、多分…大丈夫かな?」

「しっかりしなはれや?」

「頑張ります!!」


店の女と客との間に子が出来る

そんな時、女将は必ず誠十郎に立ち合わせた

生きようとしない誠十郎が

君菊として生きてみようと思い始めた


だからこそ、どれだけ命が生まれることが

尊いか教えたかった


女将の思いは、母のようだが

誠十郎は、女としての自覚はあるものの

自分に置き換えることが出来なかった



「土方はんの子を産む勉強や思て、励んだらええわ」



急に土方の名を出されて、真っ赤になる


「ホンマにわかりやすい子やねぇ
床入りしてへんのやろ?」

「当たり前やん!!そんな!!」

「ほな、あの事は、話したんか?」



誠十郎が土方に想いを寄せていることは
お見通し

土方のおかげで、女らしくなったと

女将も土方との付き合いは、応援している

しかし、女将には心配ごとがあったのだ



「まだ…」

「なるべく早く言っとかなあかんよ」

「はい…」


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