王子な秘書とシンデレラな御曹司

「小堺さんに強力なウィルスを作ってもらい、USBメモリーに入れてそれを敏明に盗ませました。昨日、僕が帰ってからすぐ部屋に入り込み、雅さんの机の鍵を壊して盗んだようです。その様子も設置したカメラで撮影して準備完了です」

すごいプロジェクトだったのね。

「敵の悪事はひとつのファイルにまとめてました。それに昨日盗んだ様子の動画を添えて、我が社の課長以上のクラス全員に先ほどメールしたのです」

「社長の所にも?」

「もちろん。さて、これから忙しくなりますよ」

副社長は楽しそうに外していた電話線をまた繋ぐ。

そして自分の携帯を取り出して電源を入れると、さっそく電話が入り会話を始める。

この午前中で
世界が変わった気がする。

机の上にあるマグカップ。
美味しいハワイ産のコーヒーはすっかり冷めてしまった。

喉がカラカラでそれを口にしようとすると

「あーっ!冷めてるダメ!」

隣で叫ばれたけど

疲れてるから何でもいいの。
とにかくひと口飲ませてちょうだい。

もう一度
最初から頭を整理したいの。

「そんな冷たいの飲んで。僕が戻ってきたらまた淹れてあげるから待ってて」
電話を終わらせ
副社長は机の引き出しから書類をまとめて手にする。

「どちらへ?」

「社長室。きっと田崎専務と敏明も呼ばれてる」

不安になって顔を見ると
副社長は自信満々な笑みを浮かべていた。
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