王子な秘書とシンデレラな御曹司

健との待ち合わせ場所はいつもの居酒屋ではなく
夜景が綺麗と有名な
ホテルのレストランだった。

会社帰りのスーツで来て失敗したかも。
どこかのショップで服を買う暇もなく
そのままコソコソとレストランに入り、黒服のお兄さんに案内されると健がすでに座っていた。

「ごめん遅れた?」

「慣れてる」

冷たい口調とうらはらに表情は優しかった。

久し振りに見る彼は自信に満ちた
穏やかなイケメンさん。
仕事が順調なのだろう。

「おかえりなさい」

「ただいま」

まずはワインを注文して乾杯。

「先にお土産」
健はさりげなく細い箱をテーブルの上に置く

「私に?」

「いらなかったら返せ」

「ありがとう。見ていいかな?」
そう聞きながら私の手は包装紙にかかっている。
有名店の包装紙。
箱を開くと黒の皮手袋。

うわぁ素敵。
皮の手袋って温かいんだよね。
サイズもピッタリ。
細身でオシャレな品物。やっぱり有名ブランドだ。
高そう。

「ありがとう」

「お礼は身体でいい」

「冗談きついわ」

「いや本気」
健はさりげなく手元のルームカードを私に見せ「部屋……取ったから」しっかりと私の目を見てそう言った。
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