落ちてきた天使
「気にしてる?」

「少し」

「なんで?」

「だって、破顔って…絶対変な顔してたでしょ」



拗ねて頬を膨らませて言うと、皐月は指でその頬を挟んだ。プスッと蛸のようになった口から空気が抜ける。



「ひゃ、ひゃめへほ……」



やめてよ、って言いたいのに未だに頬を挟まれてるせいで上手く喋れない。


皐月はそんな私を見て、ぷっと吹き出して笑うと「ごめんごめん」とその手を離した。



「あのなー。言っとくけど、彩はどんな顔してても可愛いから」

「なっ、何言ってんの!お世辞言ったって何もないからね」

「お世辞じゃない。本気で言ってる。だから、気が気じゃないんだよ、俺は」



皐月の目は本当に本気だ。
さっきまでふざけてそうだったのに、急に真顔になるから困る。


いつか絶対に心臓が爆発するだろう。



「気が気じゃない?」

「ああ。彩は鈍感なとこあるし。他の男の前でもそうやって可愛い顔してんのかと思うと気が狂いそうになる」

「考え過ぎだよ。そもそも私に男の友達なんてーーー」

「いないとは言わせない。洋平がいる」



ああ、確かに。洋平がいた。
でも、皐月は洋平のこと気にし過ぎだと思う。


当の私達はお互いただの友達、施設仲間としか思ってないのに。



「あんま俺に嫉妬させるんじゃねーぞ」



そう言って、繋いだ手を握り直す。


閑静な住宅街に響くのは、私の下駄の音だけだろうか。


皐月にときめく私の心臓の音があまりにも大きいから、皐月に聞こえてないかと心配になる。




まだ初めてのデートは始まったばかりなのに。


この甘くて刺激が強い時間が続くと思うと、身が持ちそうにない。


それでも幸せだと思うのは、皐月のことが凄く凄く好きだからだ。






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