落ちてきた天使
「夢ちゃん」



私は騒ぐ胸を落ち着かせるようにふぅと息を吐くと、夢ちゃんに向き直った。

さっきまでの情けない顔を一旦封印して、しっかりと目を開いて彼女の綺麗な瞳を真っ直ぐに見つめる。



「大丈夫。ななちゃんも施設長も皆無事に帰ってくる。皐月お兄ちゃんが絶対助けてくれるから……だから、一緒に祈ろう」

「お姉ちゃん…」

「それで、皆が帰って来た時に笑顔で迎えてあげよう!ね!」



夢ちゃんの両肩に手を置いて精一杯に笑った。

私も皆も本当は笑える精神状態じゃないのは百も承知。

それでも、誰かが笑顔でいれば安心することもある。

笑顔は力になる。光になることも出来る。


だから、私が皆の光になるんだ。



「ゔ……ゔんっ!」



涙声で、だけど大きな声で、唇を噛み締めながら返事をした後、ゴシゴシと思いっきり腕で涙を拭った夢ちゃん。

強いと思った。
私よりも数倍、彼女は強くて逞しい。



「そう、だな……俺らが情けない顔してたら皆不安になるよな」

「そうだよ。皆頑張ってる。私達も頑張ろう!」



洋平の背中を思いっきり叩く。

「ゔっ…」と洋平は声を漏らした後、背筋をスッと伸ばして「よし」と気合を入れた。



今も燃え盛る炎に目を移す。
やっぱり皐月達の姿はない。

でも、もう“もしも”を考えたりしない。

幸も不幸も自分の気持ち次第。
不安になるもならないも、自分の心次第。



救護テントに戻った洋平と夢ちゃんの後を追って、私も子供達の側に座る。

さっきまで小さい子をあやしていた小学校高学年と中学生の子達は、私や洋平、夢ちゃんの笑った顔を見てホッと胸を撫で下ろしたように見えた。


やっぱり笑顔は最高の力だ。


こうやって私が行動出来るようになったのも、全部皐月に出会って、愛をたくさん注いでくれるから。





< 213 / 286 >

この作品をシェア

pagetop