落ちてきた天使
「お姉ちゃん、私が高校卒業する前に施設再建させてよね。ま、高校卒業した後でも、ちょくちょく遊びに来るからいいけど」

「うん!頑張る」



夢ちゃんは少し目を濡らし、それを見られまいと私と目を合わせようとしない。


一番のお姉さんで、皆の面倒をよく見て、責任感が強い夢ちゃん。

誰よりも涙もろくて情に厚いから、バラバラになる兄弟を見送っては布団の中で一人泣いていた。

でも、年下の子達に泣いたことがバレないように朝にはすっかりいつもの優しいお姉さんに戻ってる。


多分、一番のお姉さんだから、甘えたい時に甘えられなかったことが多いと思う。

我慢ばかりで、嫌になることだってあったんじゃないかな。


私はそんな夢ちゃんの甘えられるお姉ちゃんになりたい。

この先、夢ちゃんが施設を卒業する日が来ても。



「夢ちゃん」



腕を広げて、逞しく我慢強い彼女の名前を呼ぶ。

ずっと視線を逸らしていた夢ちゃんは、目を大きく見開いて私の方へゆっくりと目線を移した。



「今までよく頑張ったね。もう、一人で我慢しなくていいんだよ?」

「っっ……」



綺麗に透き通った瞳から大きな雫がスーッと溢れた。そして、徐々にくしゃくしゃに顔を歪めると、「お姉ちゃんっ……!」と私の胸に飛び込んできた。

それを確かに受け止めて、震える体を抱き締める。

うわぁー!!っと、大きな声で泣く夢ちゃんの頭と背中を撫でながら、私も再び涙を流した。



「甘えたい時はいつでも連絡しなさい!すぐに飛んでくから」

「っ、う、うんっ……!」

「……体に気をつけてね。誰かの世話ばっかりじゃなくて、たまには自分自身にも優しくしてあげてね」

「ゔん……」

「元気で、ね……ちゃんとっ、ご飯……食べるんだよっ……」

「うんっ!」



傍から見たら、おかしな二人に見えたと思う。
女同士抱き合って、鼻水を垂らしながら結構大きな声で喚いて。

それでも、私達にとってはスッキリした最高の時間だった。




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