落ちてきた天使
ドンッと壁に手を着くなり、私の反応を楽しむように「緊張してんの?」と鼻で笑う松永皐月。



「べ、別に…緊張なんてしてないしっ」



私が動揺しまくりな余裕のない声で反論してる間にも、松永皐月は意地悪そうに口角を上げながら顔を近付けてくる。



「ちょっ、ちょっと‼︎近いってば…」



慌てて空いてる方の手で男の胸を押しやりながら精一杯顔を背ける。


艶やかな笑顔から逃げようとしたけど、それはどうやら逆効果だったらしい。


松永皐月は露わになった私の耳元に触れるか触れないかギリギリの所まで唇を寄せた。



「お望みならこのままベッドに運んでやろうか?」

「ーーーっっ‼︎な、ななな……っ!」



松永皐月の低く甘い声と生温かい吐息が鼓膜を刺激する。


呼吸や瞬き、思考。私の全ての機能を完全に麻痺させるほどの破壊力だ。


身体の芯から発火してプスーッと煙が出ているんじゃないかと思うぐらい全身が熱い。


経験不足な私にはどうしたらいいのかわからず、ただ身体をカチコチに固めて動けないでいると、松永皐月はいきなり横を向いて「ぷっ‼︎」と盛大に噴き出した。


え……何?


さっきまで猛獣のような危ない色気を放っていたと思ったら、急に「クククッ」と肩を揺らして笑いだす松永皐月。


そして、その姿を唖然と見つめる私。


まさか、からかわれた…?


目尻に浮かぶ涙を拭いながら笑い続けるその姿に、私は一気に冷静さを取り戻していった。



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