落ちてきた天使
ーーーーーーー……



『え?ラーメン屋?』



昼休み。
そろそろバイトしなくちゃ、と求人誌を開いていると、『バイト探してんの?』と洋平がおにぎりを頬張りながら聞いてきた。



『うん、まぁね…』



皐月と暮らし始めてから10日。


私はまさに至れり尽くせりの生活を送ってる。



朝起きれば朝食と弁当が出来ていて、夕飯は皐月が7時には食べられるように帰って来て作ってくれる。


いつもこんな早く帰って来て仕事大丈夫なの?って聞いても、大丈夫の一点張り。



家事も全部皐月がやってくれる。


私がやろうとすると、俺がやるからって言われてやらせてもらえない。


自分のことは自分で出来るし、お世話になってる以上、少しでも恩返しをしたいのに皐月は頑なにそれを拒む。



終いには二日に一回ケーキなりアイスなり、お土産を買ってきてくれるという見事な甘やかしっぷりだ。



皐月がいない間に掃除をしたり食器を洗ったりしてるけど、なんでコソコソやらなきゃいけないんだろうって思う。


そもそも、どうして皐月は私がやるのを拒むのかな。


何も出来なそうとか、頼りないとか思われてるんだろうか。


確かに頼りないかもしれない。


私にやらせるのは心配なのかもしれないけど。


少しは信じてほしい。
私だって家事で皐月を手伝うぐらい出来るんだから……



『せめて自分のことは自分でしたいから』

『それとバイト始めること、何か関係があんの?』



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