だって、キミが好きだから。
忘れたくない
『あいつはマジでイイ奴だよ』
朔真君の言葉が頭から離れない。
言いたいことはわかってるつもりだ。
朔真君は琉衣を応援してるんだよね。
「ちょっと菜花ー!おはよう!昨日は大丈夫だった?」
靴箱で履き替えていると、後ろから萌奈が駆け足でやって来た。
ものすごい形相で、心配そうに瞳を揺らしている。
「だ、大丈夫だよ。急に帰ってごめんね」
「いやいや、菜花は悪くないから。連れ出したのは矢沢君でしょ。あの後、変なことされなかった?」
グイッとあたしの方に顔を寄せる萌奈には、よっぽど琉衣の印象は悪いみたい。
好き嫌いはっきりしてるからなー。
朔真君も心配してくれたけど……変なことって一体どんなこと?
「大丈夫だよ。ちゃんと送ってくれたし」
「本当にー?送り狼にならなかった?」
「送り狼?なにそれ」
萌奈の声に首を傾げる。
「襲われなかったかってことよ!」
「お、おそ……!?大丈夫だからっ!」
「本当に?女遊びが激しい矢沢君なだけに心配したんだからねー!」
萌奈はあたしの肩を掴んで揺さぶる。
どうやら相当心配だったらしい。