だって、キミが好きだから。


***


真っ黒な闇の中にあたしはいた。


何も見えなくて何もない、寂しくて孤独な場所。


あたしは闇の中を必死に歩いた。


歩いても歩いても、一向に光は見えて来ない。



ここはどこ……?


あたしは誰?


なんでこんなところにいるの?



帰りたい。


帰りたいよ。


あたしの居場所に。



でも……あたしの居場所って。


どこにあるの……?


あたしはいったい誰なの?


わからない。


わからないよ。



「ーーのはっ!」



遠くから声が聞こえる。



なに?


なんて言ったの?


聞こえないよ。



「ーー菜花っ!」



声がした方に必死に手を伸ばす。



だけどそれは、虚しく空を切るだけだった。



「誰?届かない……届かないよ!」



どこにいるの……?



ねぇ、あたしを置いて行かないで。


お願いだよ。


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