だって、キミが好きだから。


色素の薄い栗色の髪はお父さんから受け継いだもの。


ドライヤーでブローしながら、ブラシでとかしてまっすぐにする。


スプレーをサッとふりかけたら出来上がり。


もう背中まで伸びたんだ。


中学の時は肩くらいだったのに、早いな。


メイクはほとんどしない。


したいけど、やり方がわからないんだよね。


萌奈に教えてもらおうと思ってるけど、思ってるだけで行動には移せていない。


鏡を覗き込むと、冴えない自分の顔が映って嫌になった。


あんな夢を見たからかな。


なんだか今日は気分が重い。



「行って来ます」



「あら、ご飯は?」



洗面所からそのまま玄関に行くと、リビングからお母さんが出て来た。



「なんだか食欲がなくて」



「ダメよ、しっかり食べなきゃ。ちょっと待ってなさい」



そう言うと、お母さんは慌てて台所の方に向かった。


言われた通り、しばらく待つこと5分。



「おにぎり作ったから。中身は菜花の好きなシャケとタラコね。それと、お弁当も」



「あ、ありがと」



ずっしり重い袋を受け取って、まっすぐカバンにしまう。


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