だって、キミが好きだから。
「行って来ます」
「行ってらっしゃい。気を付けてね」
「はーい」
お母さんは毎日玄関先から手を振ってくれる。
寒いから大丈夫だって言ってるのに、結構ガンコなんだ。
学校までバス通学なので、いつものように近所のバス停でバスを待った。
あれ?
でも、なんだか今日はいつもより人が多いような。
「北上?北上じゃね?」
前に並んでいた他校の男子が大きな声を上げた。
懐かしいフサフサの黒髪と、八重歯を出して可愛く笑う彼。
「あ……!神田(かんだ)君!」
「せいかーい!うっわ、マジ久しぶりだな!」
神田君はジャニーズにいそうなほど、可愛い顔をした男の子。
明るく無邪気な性格で、誰とでもすぐに仲良くなってしまう。
中3の時同じクラスで、神田君はムードメーカーだった。