true self ~性~
「ごめん!待たせちゃった。」

「いいよ。ごめんな。
トイレ中やったのに。」

「トイレ中違うし
トイレまで来るとか
本間に変態やで(笑)
女の子にとってトイレは
彼氏に見られたくないんやで(笑)」

彼氏のほっぺたを
つねりながら
自分がかわいいと思う
女の子のしぐさをした。

<・・!?


・・・・・・。>

彼氏は俺の手を
払い除けてキスをしてきた。
俺の初めてのキス。

みんなはドキドキすると
言っていたキス。

俺には悲しさと虚しさしかなかった。

違う・・・・
俺がしたいのはこのキスじゃない。

「恥ずかしいもんやな・・・。」

照れ臭そうに笑いながら
下を向く彼氏。

彼氏は隣のクラスの学級委員で
俺もたまたま学級委員をしていて
打ち合わせなどで会う度に
話すようになって
一ヶ月前に告白されて
付き合うようになった。

笑顔が似合う爽やかな
スポーツ少年で
みんなに別け隔てなく優しくて
他の男子に比べたら
少し大人っぽい男の子だった。

この人なら好きになれるかもと
少しの期待をもって
付き合ったのだが
今キスして確信した。

俺はこの人を好きになれない。
この人が自分を好いてくれてるからこそ
この人と付き合ってたら
この人に悪い。
罪悪感でいっぱいになった。

俺は一体何者なのか?
なぜ男の人に興味をもてないのか?
まだ夢中になれる人に
出会ってないだけなのか?

そんな気持ちでいっぱいになった。

「将。ごめん
やっぱ別れたい。」

まだ照れて下を向いている彼氏に
俺は別れを告げた。

「・・・・・・・・・」

一分。二分と沈黙は続く。
俺にはこの時間が
長く感じられた。

ふと彼氏の方をみると
さっきまでの照れてる顔が
嘘のように笑顔が消えていた。

「・・・・俺のこと好きじゃないん?」

消えそうな声で
俺に問いかけてきた。

「ごめん・・・・」

俺はそれしか言えなかった。
本当の理由なんて言えなかった。

「わかった。」

彼氏はそれだけ言うと
俺の頭をポンッと叩いて

「チューしといて
良かったわ(笑)」

いつもの優しい笑顔で
冗談を言いながら
帰っていった。

なんでこんなに優しくて
いい人好きになれないのか。
なんでどうしても
女の子が好きなのか。
もっと色んな男の人を
見れば興味を持てるのか。

色んなことを考えていたら
授業を受ける気にもなれなくて
帰ることにした。

チャリにまたがり
家に帰ったら
お母さんに怒られるので
近くのゲーセンの
ベンチに座って時間を潰していた。

<もぅお昼か・・・>

携帯をいじりながら
そんなことを考えていたら
ふと目の前に男の人がいた。

「なぁ~にしてんの?
中学生?
ここおったら補導されるから
場所変えた方がいいで!!
もう昼やし飯でも食わん?
俺も暇してんね~ん!!」

茶髪でニッカを履いて
頭にタオルを巻いて
ニカッと子供のような
笑顔をしていた。

15、6ぐらいの
その男の人の子供のような
笑顔は何か安心するものがあった。

「学校さぼったから
学校終わる時間まで
時間潰してんねん。
ご飯食べるって言っても
お金ないからせっかく
誘ってくれたのにごめん」

「何言うてんねん!
お金なんかガキが心配すんなよ(笑)
俺この辺で一人暮らしなんやけど
最近自炊してて俺のご飯
旨いか判断してくれへん?
まずかったらハッキリいうて(笑)」

「えーカップ麺でいいわ(笑)
作れなさそうな顔してるし(笑)」

「アホかー!食ってくれ(笑)
とりあえず補導される前に行こか!
鞄もつわ!」

俺は警戒心などなく
その人に着いていくことにした。

もう考えるのしんどいから
誰かといた方がいい。
もうなんでもいい。
自暴自棄になりながら
チャリを押しながら
その人の後ろをチャリを
押しながら着いていってると
その人がふと立ち止まった。

「あ、俺健太って言うねん!
ほんでな今思ったんやけど
チャリあるなら2ケツでいこか(笑)
はい!チャリかして!
レッツゴー!乗って乗って!」

ハイテンションな健太の
チャリの後ろに乗って
健太の家に向かっていった。

「超特急!!ビューン!!」

「もう!危ないって(笑)」

健太は明るくて出会ったばかりなのに
一緒にいたら自然と笑えた。

<この人は子供っぽいな。>

この時は本気でそう思っていた。
子供の俺はわかっていなかった。
このあとにあんなことが
起こるなんて予測もしてなかった・・・
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