好きだと言ってほしいから
あなたは私のどこが好き?
「麻衣、おっそ~い! 何やってたのよ」

 土曜日の今日は大学時代のゼミ仲間と久しぶりの飲み会だ。
 この前葵ちゃんに時間が変更になったことを聞いて知っていたくせに、私はすっかり忘れていて家を出るのが遅くなってしまった。私の家は遠いから早めに出ないといけないのに。

「ごめんね。時間が変わったことを忘れちゃってたの」

「何のためにLINEしたと思ってんのよ、まったくもう」

 本気で怒っていないのは分かっているけれど、腰に両手を当てて頬を膨らましている葵ちゃんに両手を合わせて謝った。

「ホント、ごめんね。うっかりしてた」

「うっかりしすぎでしょ。幸せボケしてるんじゃないわよ、も~」

 着ていた桜色のカーディガンを脱いだ私は葵ちゃんの隣に座った。
 ゼミの飲み会といってもこのゼミは少人数ゼミでメンバーは全員で七人しかいない。だけど少人数だからこそ仲が良く、和気藹々とした中で楽しい学生時代を過ごしてきた。卒業した今も、こうしてたまにみんなで集まって飲みに行ったりもする。

「幸せボケって何? 麻衣、もしかしてそーいうことなの?」

 私の向かいに座っている平岡貢(みつぐ)くんだ。短く刈り上げた髪がスポーツマンらしい風貌だけれど、実際の彼はどちらかというとインドア派。背も高いし体つきはがっちりしていることもあり、学生時代もそこそこモテていたようだけれど、見た目と中身のギャップに幻滅されて振られることが多いとぼやいていたことを思い出す。

「そーいうことってどーいうこと?」

「そりゃ、この流れでいったら結婚とかだろ。麻衣、結婚するの?」
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