好きだと言ってほしいから
「今日の麻衣はさっきから平岡くんの話ばかりだ」

「そんなことは……」

「おいで」

 腕を引っ張られて立ち上がる。逢坂さんはそのまま私を隣の寝室へと連れて行った。彼は暗い部屋を慣れた足取りで進み、ベッド脇に置いたフロアランプを一つ灯す。すぐにベッドの周りが控えめなオレンジの光で包まれた。

「今から平岡くんの話は禁止だ」

 耳元で囁かれた低い声に私は体を震わせる。逢坂さんはすぐに両手で私の頬を包むと唇を寄せた。

「麻衣……」

「……んっ」

 名前を呼びながら顔を寄せる逢坂さんのキスを受けとめる。彼はそのまま私をベッドへ横たえた。

「お、逢坂さん……」

 シャワーも浴びずに性急に服を脱がそうとする彼に戸惑い名前を呼ぶと、すぐに「黙って」と言われてまたキスが深くなった。

 大きな手が半分以上まくれたTシャツの中に侵入し、背中に回る。その間もキスは続き、彼が慣れた手つきで指を動かすと、ブラのホックが外れる小さな音とともに、胸の締め付けが無くなった。代わりに温かい手の平に包まれる。切ないほど甘美なその感覚に、私はもう何も考えられなくなって、甘い声をあげることしか出来なくなっていた。
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