好きだと言ってほしいから
「あらぁ、将太くん、すごいのね」

 おばさんが褒めると、男の子の得意げな笑い声が響いた。

「お、将太たち、帰ってきたか」

「お父さん」

 居間に入ってきてそのまま縁側に向かった父はうーん、と一つ伸びをした。六年前よりも少し歳を取ったと思う。まだまだ若々しい父だけれど、父だって歳を取るのだ。

 だから、こうして日本に戻ってきて父と一緒に暮らせることは、私にとっては本当に嬉しいことだ。これを提案してくれた浩太さんには、感謝してもしきれない。

 六年前、浩太さんについて日本を発った私は、最初は中国で過ごした。浩太さんが最初に言っていた通り、彼はものすごく忙しく、体を壊さないかと私は毎日心配していた。私も、言葉が通じない国での生活は想像以上に大変で苦労もした。

 けれど浩太さんと一緒に過ごせる毎日は、それ以上に幸せだった。彼はあんなに忙しい毎日の中でも、私を常に気に掛け、愛情を注いでくれていた。彼の大きな愛に、私もちゃんと応えることができていたら嬉しい。

 その後、アジアを点々とした後でアメリカに渡った。同じように慌しい日々を過ごし、二年が過ぎたとき、私たちは一時帰国をした。

 そこで私の妊娠が発覚したのだ。浩太さんはすごく喜んでくれた。私ももちろん嬉しかった。だけどどこで産むかという問題があった。知人の少ない海外での出産を、私は覚悟していた。もともと浩太さんと結婚すると決めたときから、私にその覚悟はあったから。

 だけど彼が渋った。忙しい彼が万全の体制で私をフォローできないかもしれないことを心配した浩太さんは、私に日本に残ったらどうかと提案した。
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