Tell me !!〜課長と始める恋する時間
「初めに言ったように僕は恋愛に対して期待してません。好きだという感情にも特別な意味は持たないと思っていました。それは僕の育ってきた環境がそう思わせるようになったのです。だからこの結婚にも意味はない、そう思っていました。単なる商談の一つに過ぎないと。」


「商談って…」


「けれど、」


「けれど?」


「一度で良いから、本気で誰かを好きになってみたかった。」


「えっ?」


「愛のない結婚生活を一生送る前に、一度で良いから本気の愛というものを感じて見たかった。知ってみたかった。愛というものが本当にこの世に存在するのならば。」


「私を…利用したんですか?」


もう手元の缶珈琲は冷たくなりつつある。


今の私の心のように。


「結果としてそう思われても仕方ない。けれど誤算だった。」


「誤算?」


「本気で誰かを好きになるというのは、思ってた以上に苦しいものだった。好きになったからそこで終わりと言う訳にはいかなかった。僕は今、君を失ってしまうことに不安を抱いている。こんな筈じゃなかった。ただ、人を好きになると言う感情を知りたいだけだったのに。こんなにも苦しくなるなんて…誤算だった。それでも、」


ーーー君を好きになる気持ちは止められない






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