Tell me !!〜課長と始める恋する時間
話しながらも彼女の髪を撫でる手は止まらない。


こんなに弱々しい彼女を前に僕はこのまま彼女の全てを奪いたいとさえ思っている。


その思いが彼女にも伝わるのだろうか、彼女が僕に言いかける。


「課長…、私、課長のこと、」


けれど、僕はそれを、止めた。


僕はこれまでにも彼女から何度となくその思いを打ち明けて貰った。


僕はその言葉に何度も救われた。


愛を信じる気持ちを取り戻せた。


だから、今度は僕から彼女に伝えたかった。


僕の思いを。


本気で人を好きになることなんてなかった僕が今、思う事。


ーーー君との恋を守りたい、と言う思い。


僕は彼女に告げた。


家の為の縁談なんてビジネスと割り切ってしまえるものと思っていたのに、簡単に割り切れるものではなかったこと。彼女が去ってからの自分が単なる未練たらしい情けない男でしかなかったことを。


もう限界だ。


彼女を前にすると僕をこれまで保っていた理性なんてなんの役にもたたない。


僕は眼鏡をそっと外す。


キスをするのに邪魔だから。前まではそんな単純な理由でしかなかった。


けれど、今はそれだけではない。


僕が彼女に送る合図。


これから起こる甘い時間の始まりを告げる為の儀式。


そんな風に思っていた。この僕が。


恋は人をこんなにも変えるとは。


例え薄いレンズ一枚も隔てる事無く彼女に近づきたいんだと言う思いを乗せて、


僕は彼女の唇をうばーーー











「入るわよ。」


悪魔の声が響き彼女の唇を奪うのはお預けとなってしまった。





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