生徒だけど寮母やります!2

「.....あ、起きた。おはよう、爽馬くん」

「..........!?」


ソファで寝ていた爽馬はガバッと起き上がると、目の前の彼女を見て掠れた声で呟いた


「ハナさん.....なんで.....」


どうして彼女が今ここに!?


彼女は伊吹家にいるのではなかったか



まさか、脱走.....?


ハナは絶句して固まる寝起きの爽馬にニコリと笑うと

「大丈夫?汗かいてるけど」

と首を傾げた



爽馬はその質問には答えずに、ハナの手首をガッチリと掴む


「.....ハナさん......」


「.....ちょっと爽馬くん、手首痛いよ」


ハナは困ったようにくすくすと笑いながら、爽馬に掴まれている手首に視線を落とした


一方、爽馬の顔は笑っていない



そしてハナは、まるで爽馬を牽制するかのように強い意志を瞳に宿して口を開いた


「あ、私一時的にここに来たけど、また戻るからね」


ハナの声は自分の気持ちとは正反対で、明く軽い


.....そうか


きっと結斗が侵入者の話を知って心配し、伊吹家に帰ってくることになったのだ


だからハナは、自分の妹(景)と同学年で、シベリアンハスキー姿を知っている可能性のある結斗にバレてはいけないと

_____おそらく首輪についている緊急ボタンを押すことで

僕の父親に知らせて、月沼夫妻に散歩やお出掛けを理由に一時的に連れ出してもらったのだ


しかしハナがただ一時的に戻ってきただけだとわかっても、爽馬が彼女の手首を離すことはなかった


手首を掴まれても何事もないような顔で爽馬を見ているハナ


何も言わないけど

『私は私のやることをやり通す』


そう言われているような気分だ


そんな彼女に、爽馬は意を決したように


「あの.....」

と小さな声を震わせた


「ん、なに?」


「僕、ハナさんと一緒にいたいです」


「..........え.....?」


いきなりそう言われた彼女は、初めて戸惑いを見せる


「い、一緒にはいれないよ。また、すぐに行かなくちゃいけないって言ったでしょう」


ははは、と笑ってそう言う彼女だったが、爽馬の真剣な表情に息を飲んだ
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