生徒だけど寮母やります!2

何を言わんとするかは、市河に十分伝わったようだ



.....テーブルの左側へ!


景がそう念じた次の瞬時、2人は横向きのテーブルの左側に素早く移動する



.....ここで思いっきり鈴を鳴らす!!


ゼロコンマ数秒後、景は自分の意思を‘‘読んだ”であろう市河とタイミングを合わせて繋がれた手首を勢いよく上下に振った


シャラシャラシャッッ



コウモリの軍団は、音に反応して2人目掛けてまっすぐ飛行する



.....テーブルの右へ!!


そして2人はコウモリを確認する間も無く、鈴が鳴らぬよう慎重にテーブルの右側へと走り抜けた



鈴の音がした方には既に誰もいないことに今頃気がつく、頭の悪いコウモリ



市河はその様子を後ろ目に見ながら追いつかれるよりも早く先へ進もうと目で訴え、景も頷いて走るスピードを速めた



コウモリがやってきた暗がりが、廃墟の進路であるようだ


前が見えないと目を凝らしたのも束の間、光が差し込む空間へと抜ける



.....コウモリを、撒けた?



市河と比べて体力のない景は少し息を荒くさせ、膝に市河と繋がっていない左手をつき「はぁっ」と溜息をついた


景ほど疲れてはいないものの、市河も安堵したように肩で息をする



「はぁ.....ははっ、はははははっ」

「は.....はぁ.....あはははっ」


なぜか2人とも笑いがこみ上げてきて、顔を見合わせて笑ってからハイタッチを交わした



「はぁ.....日向完璧だよ!」

「ははっ、まーね!」


やり遂げたような表情の市河に景は笑顔で大きく頷く



「読心術はお手の物だね!」


そう言った景に、市河は「ん?」と微笑みかけ首を振った
< 355 / 547 >

この作品をシェア

pagetop