生徒だけど寮母やります!2

「使ってないよ、読心術」

「え?」


予想外の答えに、景は目を丸める


「じゃあ.....ただの以心伝心?」


そう呟いてから、恥ずかしいことを言ってしまったような気がしてハッとした


そんな景の様子に気がついているのかいないのか、市河は得意げに笑う


「良いフレンドシップなんじゃん?」


フレンドシップという単語に、景は聞こえないほど小さい声を漏らした


「ぁ.....」


市河と一緒にいたたくさんの時間が、気づかぬうちに何層にも重なっていたことを知る


自分が彼を男子寮Bに誘ってから、いつの間にか当たり前のように側にいる存在になり


彼の名の通りの暖かさにいつも、照らされ守られていた


そうか.....


やっぱり私は男子寮Bの寮母だけど

それより前に


日向の親友だったんだね___


廃墟の壊れかけた天井の隙間から射し込む光が、景の顔を淡く照らす


眩しそうに目を細めてからもう一度目をゆっくり開くと、隣にいた市河がこちらに微笑みかけていることに気がついた


「日向.....」

「さ、行こう」


そう言って、ブレスレットで繋がった景の手をしっかりと握る


「え.....」

戸惑う景に何も言う隙を与えぬまま、市河は前へと歩き出した


景も慌ててバランスをとりながら足を前に出し、開きかけた口を閉じる


自分を引っ張るように目の前を歩く市河の背中が、女性の背中なのに大きく見えた



初めて日向の手に触れて、緊張で心臓が口から出そうだ.....


自分よりも大きい掌の柔らかさや、力がこもった指先


ドキドキして、熱いのが伝わっちゃったらどうしよう.....


強く握るから、余計に熱くなるよ.....


化け物が出てけることよりも何よりも、それが一番緊張した

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