生徒だけど寮母やります!2


私の言葉に、二人はただ言葉を失った様子で視線を合わせる


もっと安心してくれるかと思った


「不幸中の幸い」だと言ってくれるかと思ったけれど、彼らの表情は困惑気味だった



「そう.....」


かすれ気味に呟いたエマの声を、乾いた拍手の音が消す


パチ、パチ、パチ、パチ



振り向くと後ろにはスーツ姿の小高幹部が立っていて

その顔には微笑が浮かんでいた


「良くやってくれた、ハナ。色々とバレたと言っていたが、それは君が昨日託してくれた情報の流出が影響して伊吹グループはそれどころではないだろう。やられる前にやったのだから大事にはならないさ」


「幹部.....」



ソファにへたり込む私は幹部を見上げると、口をキッと強く結ぶ


「それに、君が結社に戻るきっかけにもなって良かっただろう」


小高幹部はそう言いながら、複雑な表情の私を見ると

「どうした?」

と尋ねた



「いえ.....その.....」


「伊吹家で、何かあったかな?」


全て見透かしているかのように囁かれ、思わず背筋が凍る


この人の言うことをきいているのが一番の安全策だと思ってしまうほどに


洗脳されすぎていて、笑えてしまう


ここから抜け出せない



その時後ろから誰かが走り来る足音が聞こえて私はとっさに振り向いた


その場にいた全員がそちらに注目し、その人物は足を止める



「どうした爽馬?」


彼にとっては父親である幹部に尋ねられ、小高爽馬は立ち止まった


その視線は私を捉えて動かない


立ち尽くしたまま無反応の爽馬に肩をすくめた幹部は

「ゆっくり休むといい」

と穏やかに私を見る



なぜか、なにも言えなかった


数秒の沈黙がその場に流れる



そして次に口を開いたのは爽馬で


「良かったですね、うまくいって」


その言葉に目を大きく見開いた私は、表情を変えぬまま幹部を見上げ


満足そうに微笑む瞳に戦慄した

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