生徒だけど寮母やります!2

追っ手たちとの距離50メートル


千冬はルークがなにか言いかけたのを感じて

「ルーク、ガラス割って」

と頼む

「ガラス.....?」


一瞬戸惑うルークに千冬は

「大丈夫だから、任せて」

と悪い笑みを見せた


「Oh.....了解」


とりあえず彼には何か考えがあるのだろう


全てを千冬に任せることにしたルークは、ガラスの割れた部分から一歩横にずれ距離をとる


そして


「3.....2.....」


ルークがカウントを開始したのと同時


「耳塞いでてよ!!」

千冬がそう叫び、左足を下げ右手を前に突き出した


「1」


パァァァンッッ!!!!


ガラスにルークの足蹴りが決まり、元々割れていたこともあって大きくヒビ割れる


そして


バリィィンッッ!!!

ガシャッッッ!!!


大きな音を立てて床に落ちた


瞬間、目の前にいた追っ手たちが立ち止まって頭を抱え顔を歪める


グワァァァァンンン

耳に籠るような音が、千冬とルークを包んでいた


「What.....?」


呆然と呟くルークに、千冬が汗を垂らしながら説明する

「ガラスが割れた音を拡大させて、追っ手を同じフィールドに閉じ込めた。あの人たちは今、永遠と続く何十倍にも膨れ上がったあの音の中にいるんだ」

「そんな事ガ.....」


音霊使いの能力に感心しながら、ルークは追手が苦しむ光景を見渡す


千冬の言う「フィールド」に閉じ込められているせいか声こそ聞こえないものの、その口は何かを叫んでいるようだ


そしてその中の数人は、懸命に足を前に動かしていた


「千冬、あの人たちはfieldから脱出さえすれば、もう音は聞こえナイよね?」

「う.....うん、それ欠点」

「何人かはもう出そうだけど」


次の瞬間、追手の一人が「ああああ!」と声を上げるのが聞こえ、二人は咄嗟にそちらを向く


声が聞こえたということは、その人はもうフィールド外ということで


「スゲェな.....音霊使いか.....?」

と息を切らしてこちらを睨んでいた

私服姿の二十代半ばと思しき若い男だ


その様子に、ルークが「刺激しちゃったネ、千冬」と笑う

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