生徒だけど寮母やります!2
赦し?怒り?悲しみ?


そのどれでも形容できない感情に、爽馬自身も戸惑っているのかもしれない



ライは辺りを見渡してから美音に手をかざし関係者以外からの不可視魔法をかけると、彼女は魔法を感知してはっと顔を上げた



その視線とライの視線がぶつかる



「笠上美音、あんた本当にこのまま1人で逃げんの?この先、実家にも帰らず」

責めるような口調で見知らぬ高校生に尋ねられ、美音は一瞬訝しげな表情を見せるも視線を下げて「ああ」と肯定した



「分かった.....聞け。伊吹結斗を含めて俺たちは全員、景が寮母長を務めている男子寮Bの生徒だ。あぁ、そういえば一度、伊吹家で会ったな。あんたはすぐに窓から逃げたから、顔なんて見る余裕はなかったと思うけど」


「え.....男子寮B.....?景が、寮母長.....」


「あぁ、今はな....,景はずっとお前のコトでショックを受けて自分の能力に蓋をしようとしてきた。実際はあいつの両親や、周りの大人が先立ってそれをやった。

だからあいつは元々、公立高校に進学するつもりだったんだ。ただの人間として。自分は魔術系能力者とは呼ぶにはふさわしくないと思っていたから。
寮母の仕事をやることを条件に、というよりもそれに存在意義を見出せたことで魔妖高校に入ったその後も、俺たち以外には今の今まで殆ど誰にも自分の正体すら言えずにいる。

何故だ?誰と比べてもいないのに自分が劣っていると納得し、まだ放り込まれてもいない空間を合わないと決めつけ恐れたのは。
否定されることを過剰に恐れ、誰よりも景自身が自分を認められずにいるのは。台風の日の雷を、泣いて怖がるのは!」
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