生徒だけど寮母やります!2

* * *





「と、いうわけでした」


「感動ストーリー仕立てにしとけば何となく流せるだろって魂胆見えてっけどそうはいかせないよ!?よくもそんな大事なこと思い出したみたく言ったな!何で!?」


以上です。と話を終わらせたライに咲夜が弾丸のごとく文句をぶつける



ライはきゃんきゃん吠える咲夜に顔をしかめて小さく舌打ちをした


「うるさぁ.....こいつ全然納得しねーじゃん。感動しろよ」

「あ〜したとも!涙が出たよ」

「したんかい」


市河が冷静なツッコミを入れると、千加がやれやれとため息を吐き出す


「大好きだよねー先輩たち、人の知らないところでサブクエ進めて抜け駆けすんの」


かなりの嫌味だが言い得て妙である

痛いところを突かれるも、ライは『てんむす』の6巻でパコンと千加の頭を軽く叩いた


「先輩は必死なの。行かなきゃ先越されっから。マジあぶねーよ爽馬とか。俺もBから出てって景に泣かれたい」


開き直った素直すぎる発言に、後輩3人は綺麗にドン引きする

共感してしまった残念な先輩たちは顔をそらした


「先輩たちってほんと不幸ですよね.....」

見ていてかなり気の毒になってきた弥隼がボソリと言うと

「寮母さんが5人くらいいれば平和に解決するのにね」

と千加が頷く


確かに景が5人いたらいいかもしれないなどと一瞬でも考えてしまった己を恥じて、市河が咳払いをして口を開いた


「まーとにかく、抜け駆け大好きライさんもみんなに伝えるべきだと思うくらいの良心があったと思って許してよ。景がいる場所では言えなかったし」

「妹の景ちゃんだけが知らないっていうのも何だか可哀想だけど.....」


結斗が複雑な面持ちで呟くと、ライは彼の前に立ちキャラメル色の瞳をまっすぐと見据えた


「それは本当に思う。血の繋がった家族なのに、俺たちだけが会ってその時のこと共有して、あいつには話さないっていうのは.....裏切られたと思われてもおかしくない。
もし打ち明けたとしても、景ならこのまま自分探しの旅をし続ける笠上美音の考えに賛成してくれるかもしれないとも思った。

でもあいつは心配して捜索に明け暮れる両親のことを見てきたはずで.....俺がその立場だったら絶対姉の美音と両親の板挟みになって、素直に美音に賛成できないと思った。

俺たちだってずっと爽馬のこと探し続けて、やっと見つけて絶対逃がさねーって思っただろ」


結斗は一言「そうだね」と呟く



「納得して欲しい」


珍しく真剣にライが頼むので、驚いた結斗は薄く口を開けたまま動きを止めた



「僕からもお願いしたい」

いつの間にやら市河のベッドに腰をかけていた爽馬も立ち上がって注目を集める

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