真夜中の恋人
「ナツ?」
「……人が居るところでは止めて」
「そうだね」
タカヤは苦笑いを浮かべて、わたしに触れている手を退けた。
気まずくなって目を逸らすわたしに、タカヤは困ったように溜め息を吐いた。
それから
「悪いけど、少し待ってて」と、わたしをその場に残し、談笑している招待客の輪の中に入っていった。
「…………」
その様子をぼんやりと眺めていた。
まるで、知らない人を見ているみたい。
そうだ。わたしはタカヤのことを何も知らないんだ。
名前も年齢も、何も知らない。
あの部屋を出て行けば、もう二度と逢うことはない人なのだ。