真夜中の恋人

注文を済ませたタカヤと取りとめの無い話をする。
だけど、普段会話らしい会話を交わしていないわたし達は、直ぐに言葉に詰ってしまう。

切子細工が施してあるお猪口に注がれた冷酒を飲み干すと、タカヤが無言でお酌をしてくれる。

「ありがとう」

「どういたしまして」

言葉は続かない。けれど、それが苦痛じゃないから不思議だった。


「美味そうに食べるね」

「だって、本当に美味しいもの」

「他に、何か欲しいものはある?」


……欲しいものなんて。
タカヤの他に何があるっていうの。でも、それは手に入らないから。

「冷酒をもう少しだけ」

そう言えば、「可愛いね」とタカヤは笑った。


< 66 / 69 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop