ラブレターを君に
理音は、あの日以来、今まで以上に両親に、厳しい態度で辛く当たられていた。長年に渡り、口答えなどしたことがなかった理音に、急に親に対して発言ができるはずも無く、窮屈な、毎日を強いられていた。



夜寝る前には、必ずケータイを眺めていた。



いつでも、ここを押せば、カズさんと話す事ができる……とは思いながらも、掛ける勇気がなかった。



ある日、母親には、内緒で、カズさんのシングルCDを全部買い込んで来た。



夜に両親が寝静まった頃、部屋でヘッドフォンを耳に当てながら、密かに聞いて眠る日が続いた。



何度聞いていても、飽きない。あきるどころか、どんどん、理音の頭の中に旋律がひとりでに降りて来る。


ある日、ピアノの練習をしているうちに、知らず知らずに、いつも聞いていた、カズのピアノ曲を弾いている自分が居た。



その時、突然に、あのケータイがなった。



怖々出てみる……


(理音)
「はいっ、…もしもし……」



(kazu)
「何してた?………」



(理音)
「………」
その一言を聞いただけで、言葉に詰まり、声にならない。



(kazu)
「まだ……独りぼっちなのか?…まだ、前のまんまなのか?」



理音は、答える代わりに、さっきまで弾いていた曲をカズにケータイ越しに聴かせた。



(理音)
「カズさん!聞こえる?……」



(kazu)
「何で…その曲を……弾いてる?その曲は、俺が…寂しい時に作った曲なんだぞ!………もしかして…今、泣いてるだろ?」


(理音)
「カズさんに……会いたいの!」
ツーーーーー


いきなり切られてしまった。



カズにしてみれば、コンサートツアーの準備の真っ最中であった。もう、缶詰状態で、何処へも出れない行けない中、人目を避けてケータイを掛けて見た。
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