伝えたい。あなたに。

恋の季節

最近は咳がよく出る。



熱っぽいわけでもない。



それは山瀬先生ももちろん気づいていて。



『最近ずっと咳してるでしょ?』



大人しく目を合わせる。



『なんで?』



『検査しようか。』



『痛い?』



いつまでも子供みたいなことを言ってはいけないと思いながらも、一番気になるのは痛みの有無だ。



『うん。だから何?』



顔色ひとつ変えずに答える。


やっぱり検査や治療に関して文句を言うのはもう許されない。


我慢するしかない。


治すためならと、自分を奮い立たせる。


そうして、限界も知らずにそれを越えようとしてしまうのは、いつものこと。


バランスのいい頑張り方がわからない。


不器用なんだと薄々気づかされる。


『先生目の前にして一人で考えごとするのやめてくれる?せっかくいるんだから。』


はっとして顔を上げる。


『忘れてた先生のこと。』


冷たく言ってみる。


『お子ちゃまなんだから、一人考えたって何も変わらんぞ?』


倍以上の仕返しをされた気がする。


何も言えない。
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