HE IS A PET.


 怜の器用な指や柔らかい唇や、憂えた瞳を。愛しく思えば思うほど、不毛な嫉妬が募る。

 この指で飼い主に触れ、この唇で求め、この瞳ですがっているのかと思うと、ぎゅうっと胸が締めつけられる。


「何で……怜は、ペットなの? 大体、ペットって何。ペットって言ったら可愛く聞こえるかもしんないけど。言い方変えれば、ただのヒモだよね」

 怜は沈痛な表情で、おずおずと片手を差し出した。
 
 それは私の頬に触れる寸前の距離で、戸惑うように静止した。


「何で……泣くの。腹が立ちすぎて、泣けた?」

 泣きそうに笑う怜に、ますます涙が溢れた。

「……っ、そうだよ。ペットなんて、嫌い。アズミンに尻尾振ってる怜なんて……見たくない」

 言い放って、脱力感に襲われた。
 傍らのベッドにへたりと腰を下ろす。

 怜も手を下ろした。


「……アズミは、俺を拾ってくれた……恩人なんだ」

 苦しそうに吐き出される言葉に、黙って耳を傾けた。


「アズミに拾われる前から、小さい頃からずっと……俺はペットだったから」 

 ああ。前にアズミンから聞いた話とリンクする、怜の前の飼い主の話。
 十二年間も一緒にいて、身も心も捧げていたのに、手酷く怜を捨てたという、怜の幼なじみ。


「チトセに捨てられたあと、どうやって生きたらいいのか分かんなくなって……今は、アズミがいるから生きてられる」



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