HE IS A PET.
「迷ったら電話して来いよ」
チトセの案内で、少し歩いた先の薄暗い雑居ビルに入る。
エレベーターで上がり、『有限会社 幸誠企画』という小さな金プレートがかかっているドアの前に来た。
とたんに緊張が募る。
ドアに伸ばした手をぴたりと止めて、チトセが言った。
「怖いなら引き返せよ」
言い放ってドアを開けると、振り向きもしない。
その突き放すような背中は、なぜか信頼できそうな気がした。
中に入るなり視界に飛び込んで来たのは、ソファーだった。
女の子が二人座っていて、それぞれにスマホを弄っている。ちらりと顔を上げ、また手元に視線を落とす。
その奥の社長席のような重厚なデスクでは、軽薄そうな若い男がテレビゲームに興じていた。
チトセと私を見て、
「面接?」
と片眉を上げた。
「ヤボ用。奥借りる」
奥、とチトセが言った部屋に入ると、狭い室内に無理やり詰め込まれたように応接セットが置いてあった。
その黒い革張りのソファーに腰を下ろして、チトセは煙草に火を点けた。
「突っ立ってねえで座れよ」
座ると、チトセは私をじっと見た。排他的な瞳で。