HE IS A PET.
嗅ぎ慣れた匂いに包まれて、飼い主の夢でも見ているんだろうか。
手首に嵌まった時計を見て、今朝は酷なことを言ってしまったなと反省する。
『そんなに好きなら、無理にでもついて行けば良かったのに』
そうしたくても出来ない理由は、アズミンから聞いて知っていたのに。
怜は実家を出る時に、条件としていくつかの約束を親と交わした。
その内の一つが『学校にちゃんと通う』だから、学校を休んで旅行には行けない。
柔らかい毛並みを何度も撫でつけながら、自白するように呟いた。
「ごめんね、怜。いい子ね。好きだよ」
どのくらいそうしていただろうか。
自然に瞳を開けた怜と、静かに目が合った。
驚きもせず、ぼんやりと私を見つめたまま、怜は昨夜と同じように、私に向かって両手を伸ばした。
すがるようなその手の間に、顔を寄せた。
「迎えに来たよ、怜。帰ろう」
諭すように言ったけれど、怜はただじっと見ているだけだった。
無心にねだっている。言葉ではなく、唇を。
そのひたむきな欲求を、叶えてやりたいという欲が沸き上がる。
唇を近づけて、物欲しそうな唇に優しく押し当てた。
それに呼応するように、怜の唇が開いた。
私の唇を、はむっと啄む。続いてぬるっとした柔らかな感触が、上唇の内輪郭をなぞった。
それは官能的というよりも、くすぐったいような動きで、私の唇は自然と笑みを漏らした。