HE IS A PET.
怜を預かる日がやって来た。
諸事情で立ち合えなくなったアズミンの代わりに、やって来たのは、真崎さんだった。
社長の右腕として、会社をバリバリ運営しているやり手の二十九歳。
と聞けば、イタリアンスーツがビシッと似合うインテリ系イケメンを想像してしまうけれど。
実際の真崎さんは、冴えないブロックチェックのシャツを、スラックスにインして着こなしちゃってるようなお方で、とても二十九歳には見えない。
そう思わせる大きな要因である頭をペコリと下げて、彼は先に待っていた私に、うやうやしく挨拶をした。
「すみません、お待たせして。安住がいつもお世話になっております」
「あ、いえいえ。こちらこそどうも。まあ、どうぞ」
着席を勧める私に一礼して、真崎さんは正面に座った。
一歩遅れて、付き添いの男の子がその隣に座る。
「まあまあ、まずは一杯どうです。乾杯しましょ」
ドリンクメニューを真崎さんに押し付け、先に頼んであったビールジョッキにクイっと口づけた。
ぷはぁ。仕事終わりのビールは最高だじぇい。
「新しい社員さん?」
チラチラと窺うような視線を向けてくる見慣れぬ若い男の子に、営業スマイルを向ける。
アズミンの会社の社員は、真崎さんと、山田という無愛想な女だけだ。
新入社員が入ったんだろうか。このご時世に儲かってやがんな。
「すみません、紹介が遅れました。彼が怜です」
真崎さんの言葉に、目が点になった。
「え、怜って……え?」