HE IS A PET.

 それからカクテルで乾杯して、料理を数品頼んだ。

 私の仕事の話から入り、平林のおじーちゃんの話、守田さんの家族や守田さんの仕事の話、お互いの学生だった頃の話や趣味の話。
 最初こそぎこちなかったものの、お酒の助けもあって会話はどんどん弾んだ。

 けれど、合間合間に伝えられるストレートな好意が、時折私を怯ませる。


「倉橋さんは、遠距離恋愛は無理なタイプですか?」

「無理っていうか……したことないから分からないですねー」


「遠恋って、会いたい時に会えない辛さで駄目になるってよく聞くけど。倉橋さんも、付き合うなら毎日会える人がいい?」


 そんなこと、訊かれるまで意識したことがなかった。
 私が過去に付き合った二人は、どちらも付き合う前から『毎日会える人』だったからだ。社会人になってからは彼氏ナシ。

『会いたいけれど、会えない』という切ない恋愛は、経験がない。


 そこまで考えて、ふと怜の笑顔が浮かんだ。

 
 怜に、会いたい。
 でも会った方が淋しくなると知っているから、会いたくない。

 恋愛感情とはきっと違う、愛着という厄介な感情だ。


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