あなたの大切なひと
これを機会にもう竹本を思うのはやめよう。
新年度が始まるまでの一週間、私は竹本に引き継ぐべき事項のまとめに没頭した。まるで、さよならの気持ちを書くように、引継ぎ書を作った。
寂しかった。

これで終わりかと思うと涙がでた最終日、職場を出た私は、急に泣き出した。
一度涙が流れると次々ととまらなくて、暗い道を選んで帰った。

折しも、竹本の婚約者は、念願叶ってこちらに帰ってこれたらしい。
そんな私にとっての悲しい情報もあったから、嬉しそうにそれを語る竹本の姿も見たから、涙は止まることがなかった。
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