プリマネ!恋はいつでも真っ向勝負
「私もついてくよ」

「一人で大丈夫、ちゃんと戻ってくるって。
はい、カバンも全部置いてくから」


立ち上がろうとした理穂の肩を押して座らせてから、スマホやら財布やらが入ったベージュのカバンを机の上に置く。

人質ならぬ物質があれば安心でしょと。


机の上に置かれたカバンに、理穂もあたしが逃げないと納得したみたいなので、コートだけをはおると手ぶらで部室を出た。




今となっては貴重なあたしの味方の理穂を置いてでた矢先、ついに先伸ばしにされていた死刑宣告を受けた。

グラウンドの隅っこを歩いてるとばったり出会ってしまったんだ、一輝くんに。


たった一週間と少し会ってないだけなのに、ものすごく久しぶりに感じる。

だけど、いつもの一輝くんだ。
冬でも日焼けした肌も、よく着ているチェックの服も、一年中丸刈りにされた頭も、あたしの大好きな一輝くんのまま。


「かずきく......」


久しぶりに会う一輝くんに何か声をかけようかと迷うけど、あたしを見つけたとたんに一輝くんが表情をかたくしたのに気づいて、声がかけられなかった。

一輝くんもあたしと同じく迷ったみたいで口を開きかけたけど、結局は何も言わずにうつむいて通りすぎる。



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