プリマネ!恋はいつでも真っ向勝負
一輝くんはそんなあたしを優しい笑顔で見つめていたかと思えば、いきなりぎゅっと抱きしめられて、思わず涙がこぼれた。


「かず、くん......。
......おめでとう。やったね」

「ありがとう」


あたしも一輝くんの背中に手を回すと、彼の熱が伝わってきて、なんだか胸が熱くなる。


「初めて会った日から、ずっと信じてくれてありがとう。
まだ野球部もないのに、本気で甲子園行けるって信じてくれたのは、みどりだけだった」


そう言われて、初めて一輝くんに会った日のことを思い出す。

強豪校でもないのに、いきなり甲子園目指そうとかどう考えても頭のオカシイやつだよね。

でも、あたしは信じてたよ。
一輝くんなら絶対やってくれるって。


一輝くんには信じてみようって思わさせてくれるパワーがあるから。

みんなだっていつしかそれに気づいて、そして......。


「だいすき」


一年越しに約束を果たせたね。
本当に甲子園行けるんだね。

今ごろになって、一輝くんに抱きしめられて、ようやく実感がわいてくる。


「うん、俺も」


かわす言葉こそ少なかったものの、しっかりと抱き合うとそこから思いが伝わってくるようだった。


試合が終わって、球場の廊下で一輝くんと抱き合ったのは、ほんの一瞬のこと。

すぐに片付けをして、球場を出て、今後の準備をしなきゃいけない。そんな慌ただしい一日のなかの一瞬のこと。

だけど、すごく熱くて、まるで永遠にも感じられるかのような一瞬。


今日のこの一瞬のことを、あたしはきっと一生忘れない。

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