絶叫脱出ゲーム~奴隷部屋カラ今スグ逃ゲロ~②
「松田さん……」


あたしはかける言葉も見つからなかった。


そのかわり自分の心の声に耳を塞ぎ、優也さんならどうするだろうかと考えた。


いつも冷静で、先の事をしっかりと見ている優也さんなら……。


「ねぇ、イベントって世田さんも行くんでしょ?」


「……うん、行くよ」


あたしは頷いた。


そして……チケットを1枚、取り出したんだ。


「それ……!」


「最後の1枚」


あたしはそう言い、松田さんにそのチケットを差し出した。


「これ、あたしにくれるの!?」


松田さんはすぐにチケットを受け取ってから、そう聞いてきた。


「うん」


あたしは何も考えず、ただ頷いた。


無になれ。


自分が生き残るために感情は邪魔になる。


無になるんだ。


「ありがとう! 必ず行くね!」


笑顔でそう言う松田さんに背を向け、あたしは屋上を後にしたのだった。
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