拝啓 偽りの君
「え?」

なんの事か分からないと、彼女は聞く。

「さっき、水樹が好きとかなってた時だよ。まだ嫌な事でも笑ってんのかってこと。」


「あー!それね、」

そんな事かーと笑う彼女に僕は苛立っていた。


「だいたいへらへら笑ってるから色んな事言われるんだよ。もっと嫌なら嫌って言えば?」


彼女は驚いたように目を見開く。

「ってか、水樹好きとか趣味悪いね。」

思っても無い事が口に出た。
僕は今日はどうかしているかもしれない。なんでこんなに怒ってるんだろう。


「…好きな人に誤解されるのがどんだけ辛いか知らないくせに……」

「え?」

あまりにも小さ過ぎて聞こえなかった。

すると彼女がぱっと僕を見て、

「水樹が好きなんて本気で思ってる?私はそんなに趣味は悪くなーーい!!!」

とお決まりの笑顔で言った。





もし僕がもう一人いたら、もし話してるのが僕じゃ無かったら、彼女の笑顔が嘘だって気付いていただろうか…

違うって気付けたら、彼女の本音に近づけただろうか…
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