好きっていうまでは

「お待たせしました。」


2人は黙って、こっちを見たままだった。

「秋、顔がきょとんとしてる!綺麗で見とれたー?」

奈央はそういって、場を和まそうとして、それでも黙った2人。

「なーんt「綺麗だっーの!ほら、行くぞ。アホ」

片原くんは、クルリと背を向けて、先に歩いてしまう。

奈央がこちらを見て、すごく嬉しそうにしてた。

私は、奈央の背中を押してにっこり笑ってあげた。


「俺達も行こ」

「うん!」

私たちもお祭りの波に入り始めた。

私って、本当に背が小さい。

周りがだんだん見えなくなる。


「彩華ぁ!手ぇ!」

陽輝はおっきい声で私にそう言って、手を差し出す。

その手を私は握った。

陽輝はいつも、言い方が素っ気ない。

だけど、そっちの方が落ち着く。

小学校低学年の時、地域の公園のお祭りに陽輝と2人で行った時も、

周りより背が小さい私を心配して、

「彩華、手」

と、自分の手を差し出す姿。今でも覚えてる。
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