もしも勇気が出たら君を抱きしめたい


「どうにもできないんじゃない。先生がどうにもしないだけだよ。

先生、絶対に後悔するよ。先生はなんで何もせずにずっとじっとしてるの?」


何も言い返せなかった。

僕は、本当に、何も言い返す言葉がなかった。


「僕が弱いからだ。世間の目も怖い。伊東に拒否されるのも怖い。

怖くて怖くて、一歩も動けない。」


「先生、後悔するから。絶対に。」


九条はそれだけ言って帰って行った。


寒空の下、一人ぼっちになって、いろんな思いがこみ上げてくる。

僕は、何もできないままなのに、全部を消すかのように、空からは白い粉雪が舞い降りた。



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