もしも勇気が出たら君を抱きしめたい


帰るときに伊東は照れ臭そうにいった。


「泣くつもりなんかなかったのになぁ。

九条の前でしか、男の人の前でないたことないのに」


「九条は特別やねんな」


「うん。九条は特別。」


見たらわかることだが、実際に言われると痛い。


「九条は特別やけど恋愛相談はできん。照れ臭いし。

けど先生の前ではもう泣いちゃったから、恋愛相談は先生にしよーっと」


そういうと伊東はニヤッと笑った。


僕は、伊東がつらいとき支えたいと思っていた。

けど。僕がようやく手にいれた念願のポジションは思ったよりも切ない気持ちになる場所だった。



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