鬼系上司は甘えたがり。
 
由里子と飲んだとき、彼女が少し話題にしていたシステム課の小川さんにも、よくこの階に呼び出されては迫られたものだけれど、もしかしたら主任も、小川さんをここに呼び出し、壁ドンして脅迫していたのかもしれない。

どちらにしても、全くなびかない私に、脅してくる主任と、小川さんにとってトラウマになっているだろうこの階には、どこの部屋にも電気が点いていないので人はいないと思われる。


会議室に入る前に【空室】から【使用中】にプレートをひっくり返し、ドア脇にある電気のスイッチを押して、一応内側から鍵をかける。

既に中にいる主任は、私のそんな行動を背後からジロリと眺めているようで、いくら彼女の立場であるとしても、ゾクリと背筋が凍った。


「薪」

「ひゃい!」


呼ばれてドッパリ、冷や汗が吹き出る。

主任は昨日も、ここで私に甘えた。

ただそれは「膝を貸せ」だの「お前の髪を弄らせろ」だのという、やや……いや明らかに脅迫じみているもので、嬉しい気持ちよりも恐怖心が勝っていたその時の私は、ガクガクと怯えながら主任の仰せのままに膝も髪も差し出した。
 
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