鬼系上司は甘えたがり。
一週間ぶりに出社した主任のデスクにはたんまりと書類が乗っていたにも関わらず、涼しい顔をして淡々とこなしていく様は、みんなに「さすが“鬼の新田真紘”だ」と言わしめ、そんな主任に触発され、編集部は活気に満ち溢れた。
鬼だドSだ鬼畜だと、なんだかんだ言われながらも、結局はとっても愛されているんだよね、私の愛しのドSツンデレ彼氏様って。
「オラ薪、いつまでちんたら仕事してやがる!火にくべて跡形もなく燃やすぞ!」
「ひゃーっ、すみません!頑張りますーっ!」
「挨拶回りに行くぞ。5秒以内で準備だ」
「はいっ!」
いつもの鬼畜発言が響き渡る編集部は、それを聞いている社員も、言われている私も、もちろんドS絶好調の主任も、はたまた、部長のデスクの上に本当に飾られ始めたタヌキの置き物だって、みんなどこか楽しそうだった。
「寝込んでも相変わらず鬼は鬼だわ……」
「だね」
主任の目を盗み、やれやれと苦笑いを零しながら呟いた由里子とこっそり笑い合う。
やっぱり主任はこうでなきゃ。
ただ、申し訳ないなとは思うけれど、由里子にはまだ秘密にしておきたいことがある。