鬼系上司は甘えたがり。
若干主任のことが心配になっていると、由里子はわざわざ、『つき合おうと--』の前に『わざわざ』を付けて、質問の矛先を私に向けた。
由里子の中では、主任はまだまだ“わざわざつき合う”部類の男性に入るらしく、そんな散々な評価を下している当人の彼女の身である私は、失礼な!とは思いつつも、苦笑いしか零せない。
鬼は許せる。私も常々思っているから。
でも“わざわざ”って。
この子こそ、本当の鬼だ。
けれど、そうとなれば、ここは一つ、主任と私の名誉のためにも由里子にちゃんと言っておかなければならないのではないだろうか。
きっちり好き合っている、ということを。
「いや、あの……わざわざっていうか、ああ見えて主任にも可愛いところがあるんだよ? 怒られると拗ねたり、逆にシュンとしちゃったり。由里子と鍋を食べたときなんか、迎えを呼ぶ約束を破って一人で主任の部屋に行っちゃったんだけど、私を見るなりすごく心配してね。インフルエンザで寝込んだときもそう。日中は一人で心細かったみたいで。あれはあれで、つき合ってみると案外愛おしい鬼なんですよ」
「……うわ、完全に毒されちゃってるじゃん」